岐阜県工業技術研究所:平成21年度研究成果



機械研究部

金属成形金型用機能性表面被覆処理に関する研究(第3報)
-- 表面改質 --

ものづくり産業では、製品の軽量化、材料使用量の削減、コスト低減に向けて、単位質量当たりの強度が大きい高張力鋼板の使用、成形性の悪い安価な材料への転換、被成形材をより厳しい条件で成形することによる薄肉化、切削加工の塑性加工への代替化などが行われている。しかし、これらの方法はプレス成形の厳しさを増し、焼付きなどの頻発を招いている。この発生防止のため潤滑油を使用しているが、対環境負荷低減から潤滑油使用量の削減、最終的には潤滑油を使用しないプレス成形法の確立が大きな課題となっている。ここでは、冷間金型工具鋼製のプレス金型に電子ビームを照射した時の金型表面の変化が、オーステナイトステンレス鋼の成形に対する潤滑性能向上または焼付発生回避の観点からどのような効果を発揮するのかについて実験を行った。その結果、電子ビームを照射した冷間金型工具鋼SKD11 製のプレス金型では、オーステナイトステンレス鋼SUS304 の深絞成形を行っても焼付きの発生が少ないことなどがわかった。

使い易い刃物の評価システムの開発(第2報)

刃物の切れ味評価の現状は、本多式切れ味試験機を用いて紙束の切断枚数を切れ味と定義し評価を行っている。この方法では、実際の包丁を使用した時を想定した評価では無いため、刃物メーカーからの要望もあり、そうした観点から評価できる方法を模索し、新しい切れ味試験機を試作して評価を行った。この装置は、切断方法がプログラム変更可能であること、切断動作における切断荷重の変化を捉えることができることが分かり、実用可能性を示すことができた。

使い易い刃物の評価システムの開発(第3報)
-- 包丁の使い方実験 --

使い易い包丁の開発を進める上での現状調査を目的とし、一般女性が包丁をどのように使っているか検討するため、包丁の使い方実験を行った。その結果、包丁の握り方を5 種類に分類し、それぞれの握り方をする割合を示した。またそれぞれの握り方をする被験者の特徴として、手の大きさが異なることがわかった。手の小さな人は柄と刃で包丁を握る傾向にあり、理由として小さな力で安心、安定した切断作業を行うためであると推察される。

使い易い刃物の評価システムの開発(第4報)
-- 評価グリッド法による包丁の評価構造 --

人が包丁をどのように知覚、評価しているのか明らかにし、評価構造モデルを作成することを目的とし、評価グリッド法による聞き取り実験を行った。得られた評価構造モデルから、【使いやすさ】には【作業しやすさ】【握りやすさ】が関係しており、さらに【作業しやすさ】には【疲れにくさ】【扱いやすさ】【力の入れやすさ】が関係していることがわかった。これにより、使いやすい包丁を開発する上での具体的な項目が明らかとなった。またここで得られた項目は、今後包丁を評価する際の主観評価に利用できると考えられる。

使い易い刃物の評価システムの開発(第5報)
-- 柄の太さと手の大きさの関係 --

本研究では使いやすい包丁の柄の太さを明らかにすることを目的とし、主観評価と表面筋電図に基づく柄のサイズについて検討した。その結果、握り内径(示指)と柄の太さの差の許容範囲は-3mm~-9mm であった。また握り内径(示指)約15mm の差を考慮し、柄の太さS:25mm、M:30mm、L:35mm の柄の太さのサイズを算出した。

金属材料研究部

金属成形金型用機能性表面被覆処理に関する研究(第4報)
-- 金型用潤滑性皮膜の作製に関する研究 --

固体潤滑剤である六方晶窒化ホウ素(h-BN)とハイス鋼粉末を用いてパルス通電焼結装置による深絞り金型への皮膜化について検討したところ、複合皮膜(1mm 程度)が形成できた。この金型を用いて無潤滑での深絞り成形及び摩擦摩耗試験を試みたところ、皮膜なしの金型よりも耐かじり性、耐摩耗性が向上することがわかった。

マイクロ波高速還元による
CO2 排出量低減型重金属回収法に関する研究

マイクロ波還元手法は製鉄だけでなく、産業廃棄物からの重金属回収への適用が期待される。酸洗スラッジ、めっきスラッジからのニッケル回収を目的として、酸化ニッケルのマイクロ波加熱・還元実験を行った。実験は2.45GHz のマルチモードタイプのマグネトロンを使用し、最大出力2.5kW、窒素雰囲気下において行った。マイクロ波による加熱特性は試料形態で異なり、酸化ニッケルは粉末がスラリ試料より温度上昇が速く、黒鉛、酸化鉄と異なる特性をもつ。黒鉛は粒径が細かい方がマイクロ波加熱特性が良い。還元実験では酸化ニッケルに黒鉛を重量比8.3、20(%)の割合で混合して試料を作製した。黒鉛の重量比が20%試料では、376 秒で1400℃に到達し、10(min)保持し、還元したとき、塊状で回収できるニッケルの還元率は10%であり、残りはすべて黒鉛とニッケルの混合粉末として得られた。一方、8.3%の試料では1400℃に778 秒で達し、1(min)保持で98%のニッケルを塊状で回収することができる。

高速窒化処理による金属表面硬化層の開発(第1報)

マイクロ波および電子ビームをプラズマ源とした、窒化処理法の検討を行った。マイクロ波を用いたSUS420J2 試験片における窒化実験では、サンプル表面の窒化は確認できなかった。一方、電子ビームを用いた同試験片における窒化実験においては、窒化が確認された。また、電子ビーム加工装置に加熱機構を導入し、同様の窒化実験を行い加熱が窒化に及ぼす影響について検討した。

摩擦撹拌プロセスによる
異種材料のスポット接合と鋳鉄の表面改質(第3報)
-- 摩擦攪拌スポット接合による異種材料接合に関する研究 --

固相接合であり、前処理が不要なことから摩擦攪拌スポット接合(FSSW)による異種材料接合が注目されている。本研究では、前報1)で使用したプローブのない渦溝ツールを使用して銅材とA6061-T4 材とのFSSW 接合を行い、引張せん断試験および接合断面、破断面の観察を行うことによって接合性能に及ぼす接合時のツール回転数、保持時間、侵入深さ等の接合条件が接合強度に及ぼす影響を明らかにした。さらに、超音波探傷装置を使用して非破壊で接合部の評価を行った。その結果、せん断引張強度6kN に達し、平面ツールによるFSSW 継手のせん断引張強度を超える結果を得た。また、超音波探傷装置によって観察される接合部と接合部の断面とを比較し、非破壊での接合部評価について検討した。

摩擦撹拌プロセスによる
異種材料のスポット接合と鋳鉄の表面改質(第4報)
-- 摩擦攪拌プロセスによる鋳鉄の表面改質 --

新しい表面改質手法として注目されている摩擦攪拌プロセス(Friction Stir Processing : FSP)の鋳鉄への応用を検討した。φ8mm の超硬ツールを用いて片状黒鉛鋳鉄鋳物(FC250)の表面にスポット加工とライン加工の2 種類のFSP を施し、組織観察と硬さ試験を行った。スポット加工では黒鉛まで微細化された領域と摩擦熱による熱影響部が観察されたが、黒鉛が微細化された領域は剥がれやすく、剥離してしまった試料も多数あった。ライン加工では、摩擦熱による熱影響部のみが確認され、その深さが加工し始めから終了地点に向けて深くなっていた。摩擦熱が大きくなる加工条件で組織変化領域が大きくなっていた。これらの領域の硬さは、素地部では約250HVであるのに対し、300~870HV と硬化しているのが確認された。

電子応用研究部

精密切削加工の高効率化に関する研究
-- 振動型3次元接触センサの開発 --

本研究ではNC 工作機械の機上に設置し、工作機械の工具位置を計測するための3 次元接触センサを開発する。本センサ開発では圧電素子による超音波で加振したプローブを用いることで、構造が簡素で軽便であり、繰り返し検出位置精度の高いセンサを開発することを目標とする。本報告では、研究の背景を述べた後、提案する振動型接触センサの接触検出原理、試作したセンサ本体とセンサ回路からなるセンサシステムの概要、及びセンサの特性把握を行った結果について報告する。

静電リニアモータのユニット化に関する研究

本研究の対象である静電リニアモータは、マグネットや電磁コイルを必要とせず、軽量・薄型・非磁性といった特徴を有し、制御性にも優れている。したがって、従来の電磁モータでは適用できない用途や、新しい応用分野での利用が期待されるが、汎用的なモータとしての普及には課題がある。その課題として、大出力を生成する場合には電極フィルムを絶縁液に浸して駆動する必要があることや駆動装置に関することが挙げられる。本研究ではこれらの課題に対し、モータの本体ユニットとして、組立てが容易で絶縁液を密封できるモータのケーシングの開発を行い、モータの電源ユニットとして、従来研究の知見を踏まえた小型駆動装置の開発を行う。

各種情報を利用した計測技術に関する研究

機械金属加工企業の現場では、作業員の経験と勘を頼りに、問題発生の予防、問題発生時の原因究明および再発防止策の検討を行っているのが現状である。本研究は加工企業への一助となる加工に関する情報の計測技術について検討する。本報告では、切削加工機の状態を把握するための測定方法、および県内企業において行った加工状態の測定について述べた。県内企業にてテスト加工および通常業務の測定を行い、振動、音および電流等のデータを収集し、テスト加工における比較検討や通常業務における問題発生時の原因究明に活用できることを確認した。