岐阜県機械材料研究所:平成19年度研究成果



機械研究部

刃物の高品質化に関する研究(第1報)
-- 電解砥粒研磨技術を利用したかえり取り技術の開発 --

 電解砥粒研磨技術を応用した新たな刃物のかえり取り手法の検討を行った。研磨材としてアルミナ砥粒を固定 したホール状の不織布研磨材を用いてSUS420J2試験刃のかえり取り実験を行った。その結果、0.89A/cm2 の電流密度で加工を行うことにより、刃先が丸まることなくほとんど全てのかえりを取ることができた。また、その加工刃の本多式切れ味試験を行ったところ、切断枚数39~46枚の切れ味を得ることができた。一方、1.8A/cm2 の電流密度で加工を行った場合には、刃先に多数のピットが生じ、切断枚数16 枚以下の切れ味しか得られなかった。今後、より高精度のかえり除去並びに切れ味の更なる向上、加工時間の短縮のために、引き続き加工条件の絞り込みを行っていく。

機械加工の温度制御による高機能化に関する研究(第3報)
-- 深絞り加工 --

 深絞りに用いる板材には圧延時の加工履歴が残り、その機械的特性は面内異方性1)を示す。このような板材を用いた深絞り成形品には、横断面形状や3次元立体形状に様々なゆがみが生じている。例えば成形品の横断面のゆがみは通常0.1mmのオーダとなる。金属材料は一般に高温下と低温下では変形能が異なる。この研究では、円筒深絞り成形金型のフランジ部円周方向に高温部と低温部を配置し、成形用板材(ブランク)の円周方向に意図的に規則的な温度差を与えて成形を行う域差温間成形を考案した。高温部とブランクの圧延方向などの配置を適切に行って成形を実施することにより、成形品の形状不整を是正することを試みた。域差温間成形により特に成形品側壁の円筒度を是正できることを確認した。

機械加工の温度制御による高機能化に関する研究(第4報)
-- 切削加工 --

 被削材を直接冷却し、形削り盤を用いた直線切削による切削抵抗の調査及び、エンドミル切削による切削面粗さと工具摩耗について調査した結果、以下の事がわかった。形削り盤を用いた直線切削による切削抵抗調査において、SS400 の場合、いずれの速度域も冷却切削の値が常温切削の値に比べ低くなっている。その値の差は切削速度が増加するにつれて小さくなっている。NAK55 の場合、0.22m/s においては冷却切削が常温切削より低い値を示した。しかし0.32m/s 以降について、冷却切削が常温切削の値を上回った。SKD11-QT の場合、すべての速度域において冷却切削が常温切削の値を上回っている。エンドミル切削による切削面粗さ調査において、SS400、NAK55 とも、冷却による面粗さの向上がみられる。一方、SKD11-QT においては冷却切削の表面粗さが常温切削の値に比べ悪くなる。エンドミル切削による工具摩耗の調査において、SS400、NAK55 とも冷却切削が常温切削に比べ摩耗量が大きい。一方、SKD11-QT については常温切削、冷却切削とも摩耗量は同等である。

金属材料研究部

摩擦撹拌による軽金属材料の材料改質とモールド技術の開発(第4報)
-- 摩擦攪拌プロセスを応用したモールド成形技術 --

 摩擦攪拌接合(Friction Stir Welding : FSW)技術を用いて、接合ではなく成形加工を行う摩擦攪拌成形(Friction StirForming : FSF)法の開発を行った。深さがそれぞれ2, 4, 6mm の矩形状モールドに、摩擦攪拌で軟化させた金属試料を押し込み、そのモールド形状に転写させる成形加工を試みた。モールドに材料が押し出されるため、その分加工面に穴ができてしまうが、深さ2mm のモールドはきれいに成形できた。深さ4mm の場合では充填不足等の成形不良が起こるため、深さは3mm 程度が成形限界と思われる。その他、FSW ツールのピンより幅の広い形状や薄いフィン形状の成形加工も可能であった。

摩擦撹拌による軽金属材料の材料改質とモールド技術の開発(第5報)
-- 塑性加工を応用したモールド技術 --

 アルミニウム合金(A1070)とマグネシウム合金(AZ31)の丸棒を凹凸のある金型を用いて押出成形を試み、金型温度と成形回数と結晶粒径や硬さへの影響を評価した。さらに押出鍛造成形法による複雑形状の成形を試みた。A1070 は金型温度373K でAZ31 は金型温度513K でそれぞれ3 回押出成形することによって、素材よりも結晶粒が微細化され、硬さは向上することがわかった。さらにA1070、AZ31 ともに低温下で押出鍛造成形により歯車形状の成形を可能にした。

摩擦攪拌による軽金属材料の材料改質とモールド技術の開発(第6報)
-- ピンなしツールによるFSW およびFSSW に関する研究 --

 6000 系アルミ合金の摩擦撹拌接合に関し、新規に考案したツールを使用してFSW、FSSW を実施し、接合領域の観察および強度試験を行った。このツールは通常のFSW ツールとは異なり、プローブピンのないショルダー面のみの形状で、そのショルダー面に深さ0.5mm の渦巻き状の溝を施したものである。FSW は多くの利点を有する接合方法であるが、接合終端部に残るピン穴が欠点の一つとして挙げられる。この欠点を解消するためにこのような形状のツールを考案し、本研究ではこのツールによる材料撹拌効果の確認、接合への適用について検討した。その結果、このツールによる接合部においても通常のFSW の場合に観察される撹拌領域が半球状に存在し、約2mm の深さまで撹拌されていることが確認された。またFSSW では、通常のツール以上の静的引張せん断強度を示し、疲労試験では低荷重域において従来のFSSW 継手より疲労強度が高くなることが判った。

摩擦撹拌による軽金属材料の材料改質とモールド技術の開発(第7報)
-- 摩擦撹拌による接合とモールド技術を利用した異種材料接合 --

 摩擦撹拌接合技術を応用して、アルミニウム板材と異種板材(鉄鋼板材、アクリル樹脂板材、CFRP 板材)の接合について検討した。接合材料間に挿入したアルミニウムチップがアルミニウム板材と接合し、そして変形する(モールド)ことで、カシメ構造を作り、異種材料の接合を可能とした。本手法はアルミニウムと異種材料の接合方法として、またリベットに替わる簡易な手法として有効である。また接合材料にあける穴径や挿入アルミニウムチップの大きさおよびツールサイズに関する系統的な実験により、さらに接合強度の向上が期待できる。

マイクロ波を活用した金属製錬技術の開発

 2.45GHz、最大出力5kW のマルチモードタイプのマイクロ波炉によって、窒素ガス雰囲気下で、イルメナイト(FeTiO3)とグラファイトの混合粉末のマイクロ波還元実験を行った。実験温度は、500~1370℃とし、温度によって1.8ks または3.6ks の加熱保持も行った。温度上昇はイルメナイトとグラファイトの自己発熱によるものであり、約180s で800℃、660s 程度で1300℃に到達する。実験を行った500℃以上のすべての温度で銑鉄と鉄を含むチタン酸化物が生成された。還元反応によってCO ガスが生成し重量減少するが、その減少割合を還元率とした場合、還元温度がより高温であるほど還元率が高くなった。しかし、800℃以上ではチタンの窒化物が認められ、窒素雰囲気下におけるイルメナイトの銑鉄と酸化チタンの分離回収は800℃より低い温度で行うのが望ましいと考えられる。還元率は500℃、保持時間なしで16%、3.6ks 保持で28%となり、600℃、保持時間なしで30%が、3.6ks 保持で43%へ増加した。

粉末を利用した表面処理技術の開発(第1報)

 パルス通電焼結装置を用いて、基材と粉体の界面に発生する抵抗加熱と、加圧による固相反応の促進で、製品表面に均一な反応層または拡散層を形成させる方法を検討した。特に、アルミニウム合金について検討し、チタン粉末との反応層の形成が容易であることが確認された。この反応層の性能試験を行ったところ、耐摩耗性・耐食性ともに基材に比べて性能が著しく向上した。また、この技術を様々な形状の製品へ適応させるための試みとして、粉体を製品表面にスプレー塗布し、基材と同じ形状の型で押しながら行ったパルス通電加熱処理によっても、同様の表面層が形成されることを確認した。

薄肉アルミダイカスト製造技術の開発に関する調査研究

 ADC12 アルミダイカストの鋳造シミュレーションについて調査研究を行った。左右で厚みの異なるキャビティに充填する場合、その厚みの比が変化するとどのような影響があるのか鋳造シミュレーションソフトJSCASTを用いて解析を行った。厚みの比が同じでも、ゲート厚さより薄いキャビティがある場合には、厚い方に欠陥が集まった。また、厚みの比を1:1、1:2、1:3 と大きくすると薄いキャビティ側に欠陥が集中していった。今後、実機でのテストショットと比較することで、解析の精度を高めることが課題である。

電子応用研究部

刃物の高品質化に関する研究(第2報)
--  画像解析を利用した刃先角度の測定 --

 包丁やハサミなどの家庭用刃物類における切れ味には刃先の形状や表面粗さ、材質の硬さなど様々な要素が絡んでいる。これまでの研究成果として、包丁の刃先角度、表面粗さ、硬さを変えた場合の切れ味(機械式切れ味試験および人間の感覚切れ味)への影響を調べたところ、切れ味への寄与率は刃先角度が最も大きい結果となった。一般的に刃先角度は刃物の断面を顕微鏡などで測定するが、切断や研磨などの作業が必要となるため、1ヵ所の測定に多くの時間を要する。そこで、著者らは刃先角度を非破壊で短時間に測定できる画像処理型刃先角度測定装置の開発を行ってきた。本年度は広角度な刃先角度に対応した装置の開発を行った。

静電気を応用したセンサ・アクチュエータに関する研究
-- 静電モータ用小型駆動装置の開発 --

 本研究では、近年の小型・高性能化が進むマイコンや小型・高精度化が著しいDDS IC(Direct Digital Synthesizer IC)を応用した、交流駆動両電極形静電モータ用の小型駆動装置を開発した。本報告では、高価な装置を用いることなく、汎用のパワーアンプや小型な昇圧トランスを用い、本静電モータの駆動源に必要な高電圧交流波形を生成する方法を示す。本静電モータに高電圧の駆動波形を供給するには、その周波数を駆動する静電モータと昇圧トランスの負荷に応じて適切に制御する必要がある。開発した駆動装置は、駆動する静電モータの特性に応じて、駆動電圧の周波数を自動制御する機能をマイコンとDDS IC により実装し、特性の異なる静電モータへの対応を可能とした。また、通信機能を実装し、汎用PC から本静電モータの容易な基本操作を可能にした。

無線通信を利用した生産現場の可視化技術の開発

 製造業においては、生産性向上のため製造現場の状況を正しく把握し、効率的に管理することが重要である。本研究では、既存の設備のハード・ソフト両面の変更を伴わない、外付けの監視システムを試作し、現場情報の「見える化」を実現する手法を提案する。本年度は、無線LAN 対応のセンサ端末を試作するとともに、センサ端末を動作させるための基本コマンドを実装したプログラムを開発した。また、センサ端末を統合管理するためのソフトウェアを開発し、センサ端末を使用するための基本環境を整えた。さらに、これらを活用して基礎的動作実験を行った。