岐阜県工業技術研究所:平成22年度研究成果



切れ味評価における新手法の開発と使いやすい包丁の機能設計
(第1報)

 刃物の切れ味評価の現状は、本多式切れ味試験機を用いて紙束の切断枚数を切れ味と定義し評価を行っている。包丁の切れ味は、種類や切り方により変化するが、この方法では、実際の使用を想定した切り方とは違うやり方で評価している。そうした観点から新しい切れ味試験機を試作したが1)、機能向上や評価手法の確立が必要である。本研究では、切れ味耐久試験を自動で行うことができる機能を付加することで、切れ味評価の切断力と耐久性を評価可能にすることができた。また、耐久性治具に付属のPLCにより、さらなる機能追加が可能である。

プレス成形品の形状精度向上に関する研究(第1報)

 従来、深絞りに代表されるプレス成形では、成形品の精度はあまり重要視されてこなかった。しかし、ものづくりにおけるコストの削減の要求から、切削加工をプレス成形に置き換えることが進行するにつれ、プレス成形品にも精度が要求されるようになってきた。そこで、プレス成形の内、最も基礎的な深絞りを対象に、ストレッチドロー成形法による成形品の形状不整低減の効果について検証した結果、ストレッチドローにより厚み分布及び形状の精度向上に効果があることが確認できた。

マイクロ波高速還元による
CO2排出量低減型重金属回収法に関する研究

 マイクロ波還元によって、産業廃棄物から重金属を回収し、安全・軽量なスラグと分別する手法について検討した。めっきスラッジのマイクロ波還元によって回収される金属塊には、スラッジ中に含まれる重金属元素すべてが還元・溶解するが、主たる回収目的金属はニッケル、鉄、クロム合金である。このため還元金属の選択回収を目的として、2.45GHzのマルチモードタイプのマグネトロンを使用し、最大出力2.5kW、窒素雰囲気下において、複合酸化物試料の炭素によるマイクロ波還元実験を行なった。酸化鉄と酸化鉛の500℃のマイクロ波加熱では酸化鉄と還元鉛が得られた。ただし、鉛は凝集塊でなく微小な還元鉛が酸化鉄と炭素粉末中に散在する。さらに、酸化ニッケルに酸化錫、リン酸カリウム、酸化鉄または酸化銅を混合し、それぞれの試料についてマイクロ波還元を行い、ニッケルが強磁性であることから還元ニッケルを実験後の複合粉末中から磁石によって回収する実験を行なった。酸化ニッケルと酸化錫を800℃で還元し、磁選することによって、還元ニッケルと少量のニッケル錫合金が磁石で選別され、酸化錫と少量のニッケル錫合金と分別することができた。リン酸カリウム、酸化鉄、酸化銅との複合粉末の800℃近傍での実験も行い、ニッケルの磁選による分別回収の可能性を検討した。

摩擦撹拌プロセスによる異種材料のスポット接合と
鋳鉄の表面改質(第5報)

 回転しているツールをワークに押しつけて移動させることでワーク表面を改質する摩擦攪拌プロセス(Friction Stir Processing : FSP)を鋳鉄に適用した。8mm の超硬ツールを用いて片状黒鉛鋳鉄鋳物(FC250)の表面を直線的に加工し、加工条件(ツール回転数、移動速度)と加工時温度・ミクロ組織・硬さとの関係を調べた。いずれの加工条件でも片状黒鉛の微細化は起こらなかったが、回転数2000rpm 以上でパーライト組織が変化した領域が観察された。この組織変化領域は回転数が大きくなるにつれ深くなっていた。これは、サーモビューアによる温度測定で回転数が大きくなるにつれ加工時の温度が高くなっていたことに良く一致する。これらの組織変化領域の硬さは、素地部のパーライト組織が約250HV であるのに対し、500~800HV と硬化しているのが確認された。

精密切削加工の高効率化に関する研究(第2報)

-- 振動型3次元接触センサの開発 --

 本研究ではNC工作機械において、工作機械の工具位置やワーク寸法の機上計測を行うための三次元接触センサ(タッチプローブ)を開発する。本センサ開発では圧電素子による超音波で加振したプローブを用いることで、構造が簡素であり、繰り返し検出位置精度が高く低接触圧で検出可能なセンサを開発することを目指している。本報告では、本年度試作した振動型接触センサについて、接触検出原理、試作したセンサ本体とセンサ回路からなるセンサシステムの概要、及びセンサの繰り返し精度及び、接触検出時の測定力を把握した結果について報告する。

静電リニアエンコーダを用いた回転角計測システムの開発

 静電リニアエンコーダはセンサ素子にフレキシブルプリント基板を使用していることから、一般的に使用されている光学式や磁気式のリニアエンコーダと異なり、容易に屈曲させることが可能である。本研究では、薄型・柔軟という静電リニアエンコーダの特徴を利用し、円弧状摺動面の回転角計測システムの開発を目的としている。本年度は、円弧状の摺動面を模した実験装置により、静電リニアエンコーダが安定して動作するために必要な接触圧について検討するとともに、回転角計測システムを試作しエンコーダとしての基本動作を確認した。